2つのフィン・ユール邸

デンマークにある「フィン・ユール邸」と、飛騨高山の地に再現した「もうひとつのフィン・ユール邸」。
私たちは、当初の建築の時代背景を考察し、できるだけ忠実に再現したいと考えましたが、ただそのまま再現するのではなく、現在そして未来に受け継いでいける、私たちが創造したフィン・ユール邸を創りたいと考えました。

フィン・ユールは次のように述べています。
「選択は2つあります。一つは過去のスタイルのコンセプトを誤って理解し、模倣し続けること。もう一つは、過去の作品を正しく理解し、時代に即したものを創造することです」

今、私たちはフィン・ユール本人になり、彼が描こうとした美しさに想いを寄せています。
彼自身がいろいろな試みをこの空間から生み出していったように、私たちもここから新しいものを生み出していきたいと考えています。

デンマークのフィン・ユール邸

デンマークのフィンユール邸の画像

フィン・ユールの自邸

1941年、フィン・ユールはコペンハーゲン郊外のクラットウェンゲに、自邸を建て始めました。彼はアルネ・ヤコブセンなどの建築家から影響を受けていましたが、「建築物は、まず外装を考えてから内装をはめ込む」という当時の建築の常識に疑問を持っていました。ヤコブセンの建築には、空間の活用が欠けていると考え、自分は逆の方法を取ろうと考えたようです。

フィン・ユールは、まず理想の内装と空間活用を考案し、それを満たす外装設計を手掛けました。彼の自邸に見る部屋と部屋、部屋と庭がつながり、さらに庭の奥に別の部屋が見える。そんな彼の新しいアイデアが具現化したものこそがフィン・ユールの自邸なのです。

フィン・ユール邸は、部屋と部屋、部屋と外部空間との関連性に特徴があります。当時としては稀なオープンプランとなっている、リビング・書斎・応接室を兼ねた大きな部屋をメインに、そこから庭へとつながる関連性、 薪ストーブの炎と横の窓越しの景色、ドアからのぞく隣の部屋の配置、どれをとっても十分に練られた構成となっています。特に、外の空間との連続性については、床までの大きな開口部、自然の取り込み方、地面に近い床の高さなど、日本の伝統的住宅や町家に大きな影響を受けているともいえます。

高山のフィン・ユール邸

高山のフィンユール邸の画像
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