フィン・ユール邸

庭の自然との調和 光と風を感じる室内​

フィン・ユール邸を見ていただく場合、伝統的な日本建築がそうであるように建物だけでなく自然と一体になった庭との関係を無視できません。

現在でもデンマークの自邸を訪れる人々は、フィン・ユールが思いを込めた空間と家具の関係、庭や日差しや風との関係を実感し、普段の暮らしに対する彼の眼差し、いわば彼のデザインの哲学を学ぼうとしています。

こうした空間を通じて、自然の関わりに対する人間の謙虚な生きかたを感じるのは、北欧諸国と日本のデザイン双方の共通となって表れているように思えます。

自然と共存する建築 フィン・ユール邸

フィン・ユール邸は、部屋と部屋、部屋と外部空間との関連性に特徴があります。
当時としては稀なオープンプランとなっている、リビング・書斎・応接室を兼ねた大きな部屋をメインに、そこから庭へとつながる関連性、 薪ストーブの炎と横の窓越しの景色、ドアからのぞく隣の部屋の配置、どれをとっても十分に練られた構成となっています。
特に、外の空間との連続性については、床までの大きな開口部、自然の取り込み方、地面に近い床の高さなど、日本の伝統的住宅や町家に大きな影響を受けているともいえます。

1941年、フィン・ユールはコペンハーゲン郊外のクラットウェンゲに、自邸 を建て始めました。彼はアルネ・ヤコブセンなどの建築家から影響を受けていましたが、「建築物は、まず外装を考えてから内装をはめ込む」という当時の建築の常識に疑問を持っていました。
ヤコブセンの建築には、空間の活用が欠けていると考え、自分は逆の方法を取ろうと考えたようです。

フィン・ユールは、まず理想の内装と空間活用を考案し、それを満たす外装設計を手掛けました。
彼の自邸に見る部屋と部屋、部屋と庭がつながり、さらに庭の奥に別の部屋が見える。
そんな彼の新しいアイデアが具現化したものこそがフィン・ユールの自邸なのです。

自然と共に生活するための建築様式は、日本もデンマークも同じです。
フィン・ユール邸に訪れる人々が、くらしの豊かさとは何か、居心地の良さとは何かを感じ取り、上質なデザインに触れる機会を、この高山の地に再現したいと考えています。

飛騨高山に建てる意義

豊かな文化が息づく歴史の街

飛騨高山は、江戸幕府直轄の「天領」として、江戸と京都の文化を取り入れながら独自の文化を開花させてきました。
市中心部には国選定の伝統的建造物保存地区を持ち、人々は誇りを持って現代の暮らしを営んでいます。

飛騨ならではの厳しい自然と長い歴史が共存する生活から豊かな文化が生まれ、伝統文化や建築、工芸の技などは飛騨の匠たちの手によって現在まで息づいています。

日本の伝統的建築に影響を受けたフィン・ユール邸

フィン・ユールの手掛けた建築やインテリアデザインは家具デザインと同様に、製作や建設のプロセスで、匠たちが愛情を持って手をかける部分が多く含まれており、使う人が強い愛情を感じるような独自のデザインスタイルです。

フィン・ユール邸の調査研究をするにつれ、内外空間の連続性については、床までの大きな開口部、自然光の取り込み方、地面に近い床高など日本の伝統的住宅や町屋に見られる建築様式に影響を受けていたと考えられます。

決して豪華ではなく、むしろ素朴な小住宅に込められたトータルなデザインから学ぶことは多くあります。暮らしの豊かさとは何か、居心地の良さとは何かを感じ取り、上質なデザインに触れる場所は歴史ある飛騨高山にふさわしいと考えます。

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